最近はあまり読まないようにしていますが。
言い訳でもなく、気に入った文章。
”本は、若い頃から好きで、夢中になって読んだ本もずい分多いが、
今日となっては、本ももう私を夢中にさせるわけにはいかなくなった。
新しい本を読み漁るということもなくなり、以前読んだものを、
漫然と読み返すということが多くなった。
しかしさういふ事になって、却って読書の楽しみといふものが、
はっきり自覚できるやうになったと思っている。
往年の烈しい知識欲や好奇心を想ひ描いてみると、
それは、自分と書物との間に介在した余計なもののように感じられる。
それが取り除かれて、書物との直かな、尋常で、自由な附合の道が開けたやうな
気がしている。
書物といふ伴侶。これが、以前はよく解らなかった。
私は、依然として、書物を自分流にしか読まないが、
その自分流に読むということが、相手の意外な返答を期待して、
書物に話しかける、といふ気味合のものになったのである。”