小林秀雄さんに会いに行きたくなった。
人間の建設 (新潮文庫) (2010/02/26) 小林 秀雄岡 潔 商品詳細を見る |
自分で音読して、何度も聴いています。
自分で音読しながら読んだ本なんで、しばらくありません。
もう、ずーっとないような気がします。
茂木健一郎さんによる紹介がついているのですが、
茂木さんはふたりの会話は、
声に出して声に出して読むと実に気持ちがいい、
実にすがすがしい気分になる、とおしゃっています。
茂木さんも気に入った会話としてあげていますが、
次の会話は自分で録音した音声を聴きながら
ふきだしてしまいました。
小林 「(略)そこでこんどは逆に科学者から反対がおこりまして、ベルグソンさん、ここはちがうじゃないかといわれた。ベルグソンはその本を死ぬときに絶版にしたのです。」
岡 「惜しいですね。それは本質的に関係がないことではないかと思いますね。」
小林 「ないのです。というのは、私の素人考えを申しますと、ベルグソンという人は、時間というものを一生懸命考えた思想家なんですよ。けっきょくベルグソンの考えていた時間は、ぼくらが生きる時間なんです。自分が生きてわかる時間なんです。そういうものがほんとうの時間だとあの人は考えていたわけです。」
岡 「当然ですね。そうあるべきです。」
私、学生時代はゼミでベルグソンを研究(っていうとかっこよすぎるけど)していました。
自分で「ベルグソンさん~」って言ってるのを聴いて、面白くて仕方ないのです。
時間と自由 (岩波文庫) (2001/05) ベルクソン 商品詳細を見る |
面白さを伝えづらいところではありますが、
いくら歴史的天才による雑談とはいえ、
なんとなくおかしいのです。
リズムのせいかもしれません。
物質と記憶 (ちくま学芸文庫) (2007/02) アンリ ベルクソン 商品詳細を見る |
小林 「ベルグソンは若いころにこういうことを言っています。
問題を出すということが一番大事なことだ。うまく出す。問題をうまく出せばすなわちそれが答えだと。
この考えは大変おもしろいと思いましたね。いま文化の問題でも、何の問題でもいいが、物を考えている人がうまく問題を出そうとしませんね。答えばかり出そうとあせっている。」
岡 「問題をださないで答えだけをだそうというのは不可能ですね」
小林 「ほんとうにうまい質問をすればですよ、それが答えだという簡単なことですが。」
読みながら、「あ~この考えはベルグソン的だ~」と思って、
実際にそのように話が展開していきます。
このふたりのリズムがすごく気持ちがいいのです。
小林 「(略)これは決して歴史主義という思想に学ぶのではない、記憶を背負っていきなければならない人の心の構造自体からきているように思えるのです。原始時代がぼくの記憶のなかにあるのです。歴史の本のなかにではなくて、ぼく自身がもっているのです。そこに帰る。もういっぺんそこにつからないと、電気がつかないことがある。あまり人為的なことをやっていますと、人間は弱るんです。弱るから、そこへ帰ろうということが起こってくる。」
岡 「それを真の自分だといっているのですね。」
小林 「と言うよりも、真の自分を探そうとすると、そういうことになると言ったほうがいいかもしれません。おっしゃる情緒というものにふれるということも、記憶を通じてではないかと考えるのです。本当の記憶は頭の記憶より広大だという仏説があるとおっしゃったが、その考えを綿密に調べた本がベルグソンにあります。(略)」
ふたりの会話が気が抜けているようで、会話に妥協がない。
「時間」とか「抽象的」であるということについて、
話して話しながら、お互いの考えをはっきりしていきます。
それが実にすがすがしい。
数学の話はちょっとわからないけれども、
生きていたら、小林先生と話してみたかったです。
ほかにもいくつか「なるほど!」と思う点があったので、
のちほど1,2つ書いておきます。
小林秀雄さんの本はほかにも読んでみるつもりです。
ブログで紹介してくださっていたTACANOさん、ありがとうございました!