歩きながら考える

今日は早歩きで歩いている男性に抜かされました

カタチとしては「走っている」と言っているものの、

実際は男性が大股で歩いているのと変わりない、という認識はありました。

しかし、実際に歩いている人に抜かされるのは結構悲しいですね。

今日は本を読んでいて歩くことに関する記述をみつけました。

絶版になっている本なので、ちょっと多めに引用します。

「日本人の歩き方」(矢内原伊作『歩きながら考える』1982年出版)

西洋人は股で歩き、日本人は膝で歩く。股で歩くのは腰歩行ともよばれるが、上体をまっ すぐにのばし、胸をはり、腕を前後にふり、膝をのばして歩く歩き方で、 下肢は股関節を中 心にした振子運動をする。 ふみだした足はかかとから着地し、そのまま体重が前に移されるので、運動がなめらかで停止がない。いわゆる正歩である。

われわれ日本人の歩き方は、多くの場合、膝歩行で、膝をまげてふみだした足を爪先のほ うから地面につける。 ぬきさし足という歩き方に近い。これはわれわれ日本人がもともと、 平原を疾駆して獲物を追う狩猟民族ではなく、田や畑で働く農耕民族だったことのなどりであろうか。 ぬき足さし足でなければ田や畑を歩くことはできない。農民は走ったり跳んだりする必要がない。

さらに「踊り」と「間」について

西洋の舞踊では跳躍が重要な要素だが、日本の舞踊には跳躍がない。 盆踊りでも阿波踊りでもドジョウすくいでも、ぬきさし足である。 膝歩行の場合、首は前にでて上体は前かがみになり、爪先がついてからかかとがつくので 前進の運動はそこでいったん停止し、いわば歩行に「間」がおかれることになる。一方の足が とまっているあいだに、他方の足が次の着地点をさがすという歩き方である。 腰歩行が連続 した線の上をすべって行くものとすれば、膝歩行は点から点へとたどって行く歩き方である。 歩き方は生活のリズムである。 膝歩行のリズムはわれわれ日本人の音楽や舞踊や絵画や文 学におおいに関係しているにちがいない。現代の歌謡曲にしても、軽快な早いテンポの歌が ほとんどなく、母音をむやみにながくひっぱろ遅いテンポの歌が多いのは、膝歩行の習慣か らきているのではなかろうか。

歩きながら考える、

立ち止まって考える、

話しながら考える

の3部作です。(正確には4つめに「芸術と芸術家」かな)

ジャコメッティという彫刻家・画家に興味があり作品集を見たりしているのですが、

そのつながりで、ジャコメッティの作品のモデルをつとめていた矢内原伊作に興味があり読んでいます。