職場の若手が池上彰さんの本を読んだと話していて、
これまで一冊も読んだことがないことに気づきました。
本屋さんで池上さんの帯がついているので気になって手にしました。
読んでから一週間がたとうとしていますが、
あるシーンを思い出して胸が熱くなりますので、
こちらでシェアしたいと思います。
ウィリアム・カムクワンバ『風をつかまえた少年』
東アフリカの最貧国マラウイのウィリアム・カムクワンバ少年。
14歳のときに街を飢饉がおそい、農家の彼は食べるのも一日に一度。
中学校へ通うこともできなくなります。
学校に行けなくなったその前の年、
マラウイの学校に小さな図書館がつくられていました。
カムワンバ少年はそこへいき、
本を読めば学校に行けない間も思考力が鈍るのを防いでくれるはずだ、
と思い、午前中は図書館、午後は木陰で本を読む
、という日課を厳格にこなしていきます。
そしてある日、親友のギルバードと「物理学入門」という本を見つけます。
その本で回転運動が電気を起こすことを知り実際に風車をつくろうと決意します。
マラウイでは、風は神様がたえまなく与えてくれる数少ないもののひとつだ。風は昼と夜となく木のこずえを揺らしつづけている。風車を手に入れることは単に電力を得るというだけでなく、自由を得ることでもある。そういうことだ。
その本を読みながら書棚のそばに佇み、ぼくは自分の風車をつくろうと決意した。そんなものをつくったことは一度もなかったけれど、その本の表紙に写真が載っているということは、過去にそれをつくった人がいるということだ。そう考えると、ぼくにもきっとつくれるはずだ。そう思えた。
そして、彼に運命の出会いが。
図書館の視察にきた役員が校庭にある彼の風車に眼をとめ、
さらに数日後ムチャズィーメという博士がやってきます。
この博士がラジオ局を呼び、
世界の名だたる報道機関-<デイリーダイムズ>など―をつれてきます。
「ムチャズィーメ博士、この少年はまさに天才ですね!」とその記者は叫んだ。
「そのとおり」ムチャズィーメ博士は答えた。「しかし、そこがわれわれの社会の大きな問題だ。貧困のためにこうした才能をわれわれは常に失っている。しかも彼らを学校に戻しても学校では満足な教育が受けられない。私が君たちを連れてきたのは、この子がやったことを世界に見てもらって、世界に助けてもらうためだ。」
さらに、TED会議のプログラム・ディレクターを務めるエメカ・オカファー。
新聞社や様々な手をつくして少年を探しだし、
2007年、TEDでカムクワンバ少年が壇上にあがりました。
その旅の途中で彼はカルフォルニアのパーム・スプリングスへ。
そこで彼は大風車群を眼にします。
ーあの風車群が今ぼくの目の前で風を受けて回転しているとは!なんだか、一周してまたもとの場所に戻ったような気がした。図書館の本に載っていた風車群の写真はぼくにアイディアを与えてくれ、飢饉やさまざまな困難はぼくにインスピレーションを与えてくれた。そんな風にしてこのすばらしい旅は始まったのだ。今、ここに立ち、ぼくは新たな行き先を考えた。次は何をしよう?もうすでにこんなに遠くまで来ている。このあとぼくの未来には何が待っているのだろう?広大な敷地に広がる風車群を見渡した。
(略)
まずはアフリカに戻り、学校にかよい、長く奪われていた暮らしを取り戻す。そのあとは?さきのことはわからない。もしかしたら風車の勉強をして、つくり方を学ぶかもしれない。マラウイの緑の野に風車の森を築こうと思うかもしれない。あるいは、政府に頼らなくても自力で電気や水が得られるよう、ぼくの家にあるようなシンプルな風車のつくり方をほかの人たちに教えているのかもしれない。あるいは、その両方に手を染めているのかもしれない。でも、何をやることになったとしても、ぼくはこれまでの経験で得たたったひとつの教訓を生かすことだろう。
何かを実現したいと思ったら、
まずはトライしてみることだ。
2009年、彼は再びTEDの壇上にあがります。
スピーチの後、拍手喝采とスタンディングオーベーションのシーンが感動的です。
彼は会場を見て呆然としているようにも見えます。
このとき、彼が何を思っているんだろうと思うと、
私自身、胸が熱くなります。
インターネットもほとんどふれたことがなく、
周囲は飢餓に苦しみ、餓死する人がいる生活のなかで、
まったく環境の違う国民からの拍手。
2010年9月には彼はアメリカの名門校、
ダートマス大学に入学しました。
彼の活動に興味がある方はぜひこちらのサイトを。
http://williamkamkwamba.typepad.com/
(ブログの更新は毎回かなり滞っているようですが・笑。
彼はかなり英語が苦手なんです。今もかしら?)
詳しく知りたい方はぜひ連休中に本を手にしてみては?
彼が『物理学入門』を手にして人生が変わったように、
読者の方にも価値観のパラダイム転換があるかもしれません。
今週、探している本があって新宿のブックファーストへいきました。
2フロアにたくさんの本が並んでいますが、自分が欲しい本は見つかりませんでした。
帰り道、新宿西口のオフィスビルを見上げながら、思いました。
本屋にあんなに本が並んでいたのに自分は欲しい本を見つけられなかった。その本の中で自分の知り合いが書いた本なんてあるだろうか。こんなに大勢が働くオフィス街なのに、たぶん自分はどこの会社にも必要とされてなくて、私自身もほとんど利用しているサービスがないなんて。これって信じられるだろうか、と。
本当に必要なものだけ追求して、
大切なこと、大事なことを成し遂げていく人がいるのに。