小説を書くこととマラソンのつながり、大崎善生『九月の四分の一』

パリとベルギーのブリュッセルが舞台の小説。

主人公は18歳から小説家を目指していたのですが、

あるときをきっかけにまったくかけなくなり、

そのために、いったん小説を離れてブリュッセルへ旅立つ、という話。

九月の四分の一九月の四分の一
(2003/04)
大崎 善生

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小説を書くことをマラソンにたとえているのですが、

それはこんな感じです。

4百メートルを平凡なタイムでしか走ることができない持久力のないマラソンランナー、つまりはそのころの僕の姿だった。

毎夜のように酒場を飲みまわり、人間たちの営みや様子を観察するのだ。安全なトラックから出て路上を走らなければ、いつまでたってもマラソンランナーにはなれない。

やがて足があがらなくなり、酸欠に陥り、そして僕はついにマラソンのレースを断念した。

鉛筆を置いたのである。

この本、2年前の9月に買ったのですが、

そのときは読まず、去年も9月に読まないまま本棚にありました。

そしてようやく3年目にして9月に読書。読んでよかった。素敵な短編小説です。

いつ読んだっていいんですけどね。

Quatl September は主人公が英語読みをしていて「9月の4分の1」と勘違いしてるのですが、実際はフランス語で「9月4日」という意味です。

この短編を読んで引っ越ししようかと思いました。引っ越しの話は全くないのですが、物語のように13年たって気づくものもあるんだなぁと思ったら気が軽くなりました。

(と、昨日 不動産屋を回りましたが、私の条件では今住んでいるところはベストのようなので、引越しはむずかしかなぁ・・)

大崎さんの小説ですが、村上春樹さんの文体が好きな人にははまる本だと思います。

この本の中でなるほど、と思った一文。

人間には予期すべき機能も設計図も前もっては考えられていない。そういう存在を実在と呼ぶことにする。

サルトルの公演で)